体脂肪は減らない

「筋トレを頑張っても体脂肪は減らない」ほとんどの人がカン違いしている残酷な事実

清水 忍 によるストーリー 2024/07/16 7:00

写真はイメージです Photo:PIXTA

写真はイメージです Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン

健康的な体づくりには適度な運動をすることが望ましいが、いくら筋トレや有酸素運動をしたとしても、体脂肪を減らす効果はあまり期待できないという。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士が、合理的にダイエットを進めるための基礎知識を伝授する。※本稿は、清水 忍『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

人体の余剰エネルギーは脂肪としてストックされていく

 合理的に効率よくダイエットを進めていくには、体脂肪というターゲットがどんな相手なのかを知っておかなくてはなりません。「なぜ」を追求するロジカルダイエットでは、ターゲットである体脂肪の特徴を知り、「なぜ、体に脂肪がついたり落ちたりするのか」を分かっていることがとても重要なのです。そこで、「脂肪がたまるメカニズム/脂肪が減るメカニズム」をここで簡単に整理しておくことにしましょう。

 そもそも、人間には、万が一食べられなくなったときのための備蓄エネルギーが必要です。体内に蓄えられるエネルギーは「糖質」か「脂肪」のどちらかなのですが、もともと糖質はほんのちょっとしか蓄えられません。糖質はグリコーゲンというかたちで肝臓や筋肉にストックされるものの、わずか400gほどしか蓄えられず、ちょっと運動でもすればすぐになくなってしまいます。

飢えや寒さをしのぐための生存システムが裏目に出た

 つまり、ごはん、パン、麺類、お菓子、果物、ジュースなどの糖質を普段からたくさん摂っていると、それらがどんどん脂肪に変換されてエネルギー貯蔵庫へ回されていくことになるのです。

 このエネルギー貯蔵庫は体中いたるところにあり、肝臓の細胞にたまれば脂肪肝が進み、内臓の周りにたまれば内臓脂肪が増加し、おなかや太もも、お尻などの皮下にたまれば皮下脂肪となっていきます。

 そして、こうした脂肪が増えてくると、脂肪をためこむ細胞のひとつひとつが、まるで水風船がふくらむように膨張していくのです。こうした脂肪細胞の膨張こそが肥満の正体だと言っていいでしょう。

 ですから、「なぜ、脂肪がたまるのか」をひと言で言ってしまえば「エネルギーの摂りすぎ」ということになります。

 私たち人間が太古の昔から飢えや寒さをしのいで過酷な環境を生き延びてこられたのは、この脂肪を蓄積するエネルギー貯蔵システムがあったおかげだと言っても過言ではありません。しかし、飽食の現代においては、この優れたエネルギー貯蔵システムがあったことが裏目に出て、健康面や美容面でさまざまな問題を引き起こしているということになります。

筋トレや有酸素運動よりも食事のコントロールが第一

 次に、脂肪が減るメカニズムのほうを説明しましょう。体脂肪を減らすには、体内のエネルギー貯蔵庫からどんどん脂肪を追い出さなくてはなりません。その追い出し作業を効率よく進めるにはどうしたらいいのかという話です。

 倉庫にストックされた脂肪を減らしていくには、まず、食事をコントロールしなくてはなりません。これ以上倉庫にエネルギーがたまらないようにするのはもちろんですが、摂取カロリーを少なくして、倉庫内のエネルギーが次々に使用されて出ていく状況をつくっていかなくてはならないわけです。

 摂取カロリーを少なくするだけでなく、消費カロリーを多くすることも大切です。おそらく、消費カロリーを増やすと聞いて、みなさんがまっ先に思い浮かべるのは、筋トレやウォーキング、ジョギングなどの運動でしょう。

 筋トレを行なった際、エネルギー源として消費されるのは実質的にはほぼ糖質です。筋肉や肝臓にストックされたグリコーゲンや血液中のブドウ糖などが消費され、脂肪はほとんど使われません。つまり、筋トレをいくらがんばっても体脂肪は減らないということ。誤解している人がたいへん多いのですが、筋トレは「体脂肪を減らすこと=やせること」にはつながらないわけです。

 一方、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなどの有酸素運動を行なった場合は、最初糖質と脂肪の混合物が使われ、その後、20分ほど時間が経つと脂肪が優先的に使われるようになります。そのため、「やせたいなら有酸素運動をするほうがいい」と思っている方も数多くいらっしゃいます。

 ところが、有酸素運動で消費されるカロリーエネルギーは、期待している量と比べて実際にはごくごくわずかなのです。要するに、筋トレをがんばっていても体脂肪は減らせないし、有酸素運動をがんばっていても期待するような効果は得られない。はっきり言ってしまえば、運動をがんばっていても、それだけではやせられないのです。

いくら筋トレをしたところで脂肪が減らない限り、痩せない

「筋トレではやせない」ということについて、おそらく、みなさんの中には「これまでずっと、せり出したおなかを引っ込ませようと思って腹筋トレをがんばってきたのに……」と、納得のいかない顔をされている方もいらっしゃることでしょう。

 でも、どんなに腹筋をやってもやせないのは事実なのです。

 それは、大相撲の力士を見れば分かります。お相撲さんたちは、みんなでっぷりとしたおなかを抱えていますよね。言わずもがな、あの立派なおなかのふくらみは分厚い体脂肪によるものです。

 しかし、その分厚い体脂肪の下には、鋼のように鍛えられた腹筋が備わっているのです。当たり前ですが、お相撲さんたちはみんな毎日これでもかというくらいのすさまじい稽古をして筋肉を鍛えています。もちろん、腹筋も常人には想像もつかないレベルで鍛え上げています。ところが、それだけ腹筋を鍛えていても、おなかの分厚い脂肪は一向に減っていませんよね。

 これが「筋トレで腹筋を鍛えたところでおなかの脂肪は減らない」といういちばんの証拠なのではないでしょうか。

 もっとも、みなさんご存じのように、筋トレをしっかり行なえば、筋肉は太く盛り上がってきます。すると、体のたるんでいた部分やだぶついていた部分が引っ張られて、全体に引き締まった感じに見えてくるようになります。これを「シェイプアップ」と呼んでもいいでしょう。

『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』 (幻冬舎新書) 清水 忍 著

『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』 (幻冬舎新書) 清水 忍 著© ダイヤモンド・オンライン

 つまり、筋トレには脂肪を減らす効果はないものの、脂肪のたるみを目立たなくさせる効果はあるのです。だから、腹筋トレを毎日一生懸命やっていれば、脂肪は減らなくともおなかが引き締まって見えてくる場合もあります。もともとそんなにたくさんの脂肪をおなかに蓄えていない人であれば、他人から「あれ?やせた?」と錯覚されるかもしれません。

 ただ、こういった「シェイプアップ効果」「引き締まったように見える効果」は、正確には「やせた」とは言えません。「やせた」と言えるのは、あくまで体脂肪が減った状態です。「脂肪が落ちてやせた」と「筋肉が発達した」は、生理学的にもまったく違う別々の現象であり、両者を混同することはできないのです。

 すなわち、筋トレでどんなにすっきりシェイプアップされたとしても、脂肪が減っていない限り、「やせた」の仲間には入れられないということになります。